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リニア中央新幹線は地震に耐えられない:いったん立ち止まろう
The Linear Chuo Shinkansen, a Japanese maglev line,
cannot withstand earthquakes.

石橋克彦(神戸大学名誉教授)
最終更新日:2024年4月15日

【2024年4月15日追記】
 リニア中央新幹線に関して、JR東海による2027年開業断念表明(本年3月29日)や川勝静岡県知事の辞任表明(本年4月2日)があって、マスメディアやSNSで発言が続いています。
 しかし、リニアの地震リスクへの言及がほとんどないのは、驚くべきことです。
 リニアが地震に強いというのはとんでもないマヤカシです。リニア新幹線の供用期間中にほぼ必ず発生すると考えられる南海トラフ巨大地震では、リニア自体が大被害を受ける恐れがあるし、リニアがなければ起こるはずのない災害が生じて、南海トラフ大震災を増幅し、深刻化する可能性があります。リニア路線が横切る何本もの活断層のどれかで内陸直下地震が起これば、別種のリニア大災害が発生します。
 リニア路線の9割近くがトンネルであるために、リニアが地震被害を受けたとき、乗客救助も、その後の復旧も、著しく困難であることも大問題です。そして、沿線自治体に事故対応の多大な負担を負わせて、本来の震災対応を阻害するでしょう。
 リニアの開業が遅れるのは静岡県のせいだというのも全く間違っています。品川・名古屋間の至るところに工事の遅れがあるのです。
 リニア中央新幹線について発言する方々は、せめて下記の『週刊金曜日』を読んでほしいものです。
 そして、工事が大きく遅れている今を絶好の好機と捉えて、いったん工事を中止し、リニアの必要性・安全性・経済性・環境負荷などのすべてについて、国民的議論を徹底的におこなうべきだと考えます。


・2024年5月27日(月)に、日本地球惑星科学連合2024年大会の「人間環境と災害リスク」セッションで以下の発表をする予定です。
  石橋克彦:「南海トラフ巨大地震時の新たな文明災リスクの考察:リニア中央新幹線の地震被災」[HDS09-08]
・2023年12月16日(土)に、三重県津市でリニア中央新幹線に関する講演をしました。
  当日配布資料の元(カラー版)を、こちらに掲げます。
・2023年10月28日付北海道新聞に以下の記事が掲載されました。
  石橋克彦さんと考えるリニア震災 「南海トラフ」耐えられるか
・2023年7月3日付東京新聞と7月5日付中日新聞に以下の記事が掲載されました。
  話題の発掘 ニュースの追跡 リニア 本当に地震に強い? <中日新聞>
  こちら特報部 リニア 原発 重なる構図 <東京新聞>
・2023年7月2日(日)に、長野県松本市でリニア中央新幹線に関する講演をしました。
  当日配布資料を、こちらに掲げます。
・2023年6月24日(土)に、静岡市でリニア中央新幹線に関する講演をしました。
  当日配布資料を、こちらに掲げます。
・2023年5月29日(月)に、講演&シンポ「立往生するリニア建設」で講演をしました。
  当日のレジュメと、パワーポイントのPDFを置きます。
  講演の動画がこちら(Zoom?)こちら(会場、臨場感あり)で公開中。
・『週刊金曜日』2023年2月3日号に以下の記事を寄稿しました(pp.16-19)。
  石橋克彦:「南海トラフ巨大地震でリニアは被災し、震災を拡大・深刻化させる」
  この号の「【特集】混迷するリニア中央新幹線建設」には複数の重要な論稿が収録されています。表紙目次
【2022年10月22日追記】
 10月16日(日)に、高木仁三郎市民科学基金「市民科学」公開フォーラム『リニア新幹線・外環道大深度地下トンネル問題を深掘りする』(明治大学和泉キャンパス・メディア棟M301教室+Zoom)(こちら)において、「リニア中央新幹線に対する地震学からの警告」と題する講演をしました。
 一般向けの講演は、2019年9月の歴史地震研究会(徳島)の公開講演を除けば7年ぶりで、ましてリニア新幹線に関する講演は初めてです。
 1時間の持ち時間にあわせてパワーポイントを作ったつもりでしたが、多少のZoomの不調もあって20分も超過してしまい、それでも各スライドを十分説明できず、申し訳ないことをしました。(1時間半は欲しいところでした)
 当日のパワーポイントをPDFにしたものを、こちらに掲げます。
【2022年5月3日追記】
時間的に前後しますが、拙著(次項の集英社新書)の出版前と出版後に、リニア中央新幹線批判に関連する以下の記事や論稿が公刊されました。まとめて掲載します。
・共同通信社「未来からの警告4 巨大地震の発生」(2022年1月, 地方各紙に掲載) の原稿
  石橋克彦氏に聞く「県程度で自立できる社会に 東京一極集中の是正急げ」
ZAITEN 2021年9月号(8月1日発売)に掲載
  著者インタビュー『リニア新幹線と南海トラフ巨大地震』石橋克彦
・『科学』(岩波書店) Vol.91, No.8 (2021年8月号) に掲載
  石橋克彦:「リニア中央新幹線は『第二の原発』―全ルートで工事の一旦停止を」
・静岡新聞, 2021年6月18日付朝刊「特集 大井川とリニア×知事選2021」に掲載の原稿
  新旧大動脈 地震備えは:専門家インタビュー 石橋克彦氏 県内復旧の負担増す
  特集の全体は、こちら
  なお、特集の藤井聡氏インタビュー記事に対し上記『科学』小論にコメントあり。
・朝日新聞, 2021年3月11日付朝刊・科学欄「東日本大震災10年」に掲載
  石橋克彦・神戸大名誉教授に聞く「次の複合災害に備え 真に強靱な社会を」
  もう少し長い Web 版は、こちら
Nuke Info Tokyo, Citizens' Nuclear Information Center, No. 197, July/August 2020 に掲載
  Ishibashi, K.: “Post-Corona Japan, the Quake-Nuke-Maglev Combined Disaster and the Kashiwazaki-Kariwa NPS”
【2021年6月7日から追記】
石橋克彦『リニア新幹線と南海トラフ巨大地震 「超広域大震災」にどう備えるか』
(集英社新書)

 ・2021年6月17日に発売されます。こちら
 ・「第1部 リニアは地震に耐えられない」「第2部 ポストコロナのリニアは時代錯誤」の2部構成ですが、与えられた時間内で原稿をうまくまとめることができず、とくに第2部は中途半端で不本意な出来になってしまいました。
 また、第2部で専門外の社会・経済的な議論をしていることに、ご批判があろうかと思います。しかし、地震研究者として「地下から地上の科学技術や人間社会を眺め」(「あとがき」の言葉)ていると、現代日本の主流の「常識」はおかしいと感ずることが多く、根本的な震災軽減の観点から、いろいろ書かざるをえませんでした。そして、それが「リニア中央新幹線の是非」に深く関わると考えています。
 ただし、原稿が未熟で言葉足らずのために、私の考えがうまく伝わらないかもしれません。いずれ、『地震(自然災害)に本当に強い国とは、どういう国だろうか』というような本に再挑戦できればよいと思っています。
(以上は「あとがき」に書くようなことですが、時間がなくて書けませんでした)
 ・以下は著者の責任において掲げるものです(出版社が出しているものではない)。
  ・正誤表
  ・巻末の「注」の補足や訂正
  ・「注」の追加(準備中)
  ・補足事項(準備中)
【本項以下の4項目は2020年9月16日に記す】
 JR東海(東海旅客鉄道株式会社)が東京・品川―名古屋間で工事中のリニア中央新幹線は、最近注目されている静岡県の大井川の水量減少以外にも、深刻な問題をいくつも抱えています。超電導磁気浮上式鉄道の純粋な技術開発としては素晴らしい成果が多々あるでしょうが、現実の日本の社会と国土で考えたときには、必要性、経済的実現性、採算性、安全性、環境対応性などについて多くの疑問点があるのです。
 私はとくに地震に対する安全性を懸念しており、何度か簡単に論評してきましたが、以下で詳しく論じました。
 リニア中央新幹線は、新型コロナウイルス大流行であらためて問われている私たちの暮らし方という文明論的見地からも、再考を迫られていると思いますが、以下ではそれについても私見を述べています。
【岩波書店の『科学』電子版のページで公開中】
  石橋克彦:「リニア中央新幹線は南海トラフ巨大地震と活断層地震で損壊する」
    『科学』(電子版) (岩波書店) Vol.90, No.10 (2020年10月号), e0040-e0052.
以下は、静岡新聞, 2020年7月2日付朝刊, 22面「新型コロナ  知って備える」に掲載されたものです。
  石橋克彦:「視標 変わる社会経済様式 時代錯誤のリニア再考を」 
以下は「ポストコロナの日本がどうあるべきか」についての私見で、共同通信社「視標」の原稿です。7月中旬に地方各紙に掲載されました。
  石橋克彦:「視標 コロナ後の社会 分散型の社会に変革を 1次産業の復興が必須」 
以下は、新型コロナウイルス大流行の直前に書いた震災論ですが、「ポストコロナ論」としても基本的に成り立つと確信しています。
 これからの日本にリニア中央新幹線はふさわしくないという私の考えの根底をなすことが述べられています。
  石橋克彦:「超広域大震災にどう備えるか:大地動乱・人口減少時代の成長信仰が衰亡をまねく」
    『世界』(岩波書店) 2020年3月号, 80-93. <2月7日刊>
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