古代・中世に限定したものではあるが,地点・時間(年月日時刻)・震度・揺れの性質・震度判定根拠・出典などを要素として縦横に検索が可能なデータベースを作る。ヨーロッパを中心として国際的に標準化しつつある Intensity Data Point (IDP) の構造を含むものにして,世界の学界にも提供する。
本研究は,国内外を問わず地震災害科学の重要な一翼を担う歴史地震研究において,日本での根本的基盤をなすものである。本研究(かそれに代わるもの;ただし代わるものは現在見当たらない)が実施されるか否かによって,日本の歴史地震研究の将来が決定的に左右されるといっても過言ではない。
歴史地震研究は,本来,歴史科学と地震科学の学際領域であり,高度な文献史学的方法と地震学的方法を併用する必要がある。ところが従来の歴史地震研究は,理学の研究者のみが,史料批判を伴わない地震史料の収集・刊行と解釈をおこなうことがほとんどであり,その結果,地震史料集には問題が多く,研究結果にも誤りが混在していた。また,日本列島の歴史地震研究もグローバルな地震研究の一環であるという国際的な認識が薄く,世界から孤立していた。本研究は,このような日本の歴史地震研究に新風を吹き込むものでもある。
国際的には,最近ヨーロッパを中心に歴史地震研究の国際協力が進み,標準的な震度データベース Intensity Data Point (IDP) の普及などが顕著である。平成14年7月には初の国際ワークショップがイタリアで開かれ,研究代表者・石橋と分担者・佐竹が招待された。本研究は,このような国際的な歴史地震研究の動向に沿うと同時に,史料の豊富さなどによる日本独自の方法論を世界に提供して,国際的な研究の発展に資するものである。